カイジン

さてさて

 

時は二千十六年の夏、

 

それがしは日本全土を旅しておった。

 

山梨県を流るる風はこのころまだ心地よく

 

漂うしゃぼんもふわりふわりと

 

幻のように異国情緒を演出しておった。

 

 

しかし、永遠に続くかと思われたその安寧が

 

かのようにあっさりと崩れ去ってしまうとは

 

この時、それがしは露程も思ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如現れたその太鼓怪人は

 

異国情緒とはまた違った

 

独特の「りずむ」をずんずんと奏で、

 

その「りずむ」に魅了された者達は

 

ずんずんと踊りながら

 

町中を練り歩いた。

 

気温はますます上がり、

 

皆の志気、覇気、踊りの技術まで

 

ずんずんと上がっていったのだ。

 

 

 

踊り疲れた者達が

 

町の市場で一休みをしていると

 

またも突如、鍵盤怪人と六絃琴怪人が現れ、

 

独特の「りずむ」をずんずんと奏でだした。

 

しかし、気温も上がり、

 

疲れきった町の者達は

 

もう踊る体力は残っておらず、

 

この時はたんたんと手を叩くので精一杯だった。

 

しかし、その歌声がずんずんと皆の魂に響き、

 

手拍子の音量は気温とともに

 

ずんずんと上がっていった。

 

 

 

 

町の者達の手拍子の技術が向上すると

 

手拍子だけで電気を点けられるようになった。

 

歌手の頭上に電飾を灯すことで

 

雰囲気を劇甚なまでに盛り上げ、

 

六絃琴怪人の性別までをも変え、

 

あの静謐だった山梨の大地に

 

雷鳴のごとき音楽を轟かせたのだった。

 

・・・あぁ、まだ足りない。

 

圧倒的な技術が欲しい。

 

全てを破壊し尽くす程の力が・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君たち、やめたまへ」

 

 

 

 

その彼の一言がなければ、

 

今頃もっと大事件になっていただろう。

 

いや、あのまま鍵盤怪人が暴走していれば、

 

いずれにせよ彼の右手によって

 

消されていたかもしれない。

 

 

 

 

 

かのようにして、

 

今日も倭の国は平和なのであった。